令和4年度食品衛生推進員・指導員研修会を開催しました

令和4年度食品衛生推進員・指導員研修会
目次

withコロナの秋における食中毒予防

秋に発生する食中毒の特徴

涼しくなる10月に、秋しか食べないキノコ類の植物性自然毒以外(細菌・ウイルス・アニサキス)の食中毒まで増えています。喫食する人間側の行動、体調などの変化に対処しなければいけません。必要な情報のインプットを怠らないようにしましょう。

秋に増える食中毒の原因

人間の行動や体調などの変化があります。

アニサキス関係

  • サバやサンマ等の脂がのって旬を迎え、アニサキスの宿主である魚介類の喫食機会が増す
  • 旬の魚は加熱調理せず、生食しようという需要・文化がある

増殖型食中毒菌関係

  • 気候柄、弁当等の調理後保管時間が長い食品の喫食機会が増す
  • 人間の体感で涼しいと感じると、冷蔵庫内と同じように食中毒菌が増えないだろうと油断する人が一定数存在する
  • 夏の暑さによる内蔵の疲労から感染への抵抗力が下がっており、同じものを同じ量摂っても発症しやすくなる

少量感染型食中毒関係

  • 内臓の疲労により感染への抵抗力が低下している
  • 気温が下がるにつれて、汗をかきにくくなったり、水が冷たくなったりするので手洗いの機会が目に見えて減少する

HACCPによる衛生管理のポイント

リスク = 影響の重篤さ × 遭遇する確率

常に記録まで残すもの当たり前に行うもの強弱をつけて管理します。

自分の施設に合わせたHACCPプランの作り方

STEP
業界で作成した手引書の中から、自らの業種や施設にあったものを利用する
STEP
自らの施設に合わせて修正をかける

調理食品と施設を特定せずに、全てを満たすHACCPプランは作れません!

コロナ禍で増えたテイクアウトなどの比較的短時間ながらも調理後すぐに喫食しない食品には『日本惣菜協会』発行の手引書がわかりやすくておすすめです。

(一社)日本惣菜協会発行『小規模な惣菜製造工場におけるHACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書

食中毒発生件数の多い病因物質を想定対象として、手順書見直しのポイント解説

アニサキス

アニサキスとは?

寄生虫の一種でその幼虫が食中毒を引き起こします。目視することができる大きさで白色の少し太い糸のように見えます。

サバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、イカなどの魚介類の主に内臓表面に寄生しています。寄生している魚介類が死亡し、時間が経過すると内臓から筋肉に移動することが知られているので魚介類の死後の時間経過を把握することも大切です。

幼虫なので卵を生むこともなく増殖しません。アニサキスも生き物ですので、人の胃から逃げようとして胃壁に食い込みます。

予防法は?

魚介類の死後、幼虫が筋肉へ移行することがあるため、魚を購入する際は新鮮な魚を選び、速やかに内蔵を取り除いてください。内蔵を生で提供しないでください。

魚を調理する際には、目視で確認して、アニサキス幼虫を除去してください。※食酢での処理、塩漬け、醤油やわさびを付けてもアニサキス幼虫は死滅しません。

また、アニサキスは冷凍や加熱で死滅するので、調理をする場合には-20℃で24時間以上冷凍するか、70℃以上もしくは60℃の場合は1分加熱をしてください。

リスク対策
  1. 生きたまま摂取した場合
    1. 影響の重篤さ
      胃壁や腸壁に食い込まれた場合は医療的除去が必要となり、重篤→→→影響の大きさは変えられない
      アレルギーのある人にとっては重篤、将来的な影響も大きい→→→影響の大きさは変えられない
    2. 遭遇する確率
      魚群によって変わる。また、処理時に措置により異なる→→→この確率は下げられる
      胃壁等に食い込まれるか否かは運次第→→→この確率は変えられない
  2. 死滅したものを摂取した場合
    1. 影響の重篤さ
      アレルギーのある人にとっては重篤→→→影響の大きさは変えられない
    2. 遭遇する確率
      加熱後抗原によるアレルギー保持者は一部であり、確率は低い→→→この確率は変えられない
【刺身を作る場合の重要管理点】

ポイント:原料の加熱・殺菌ができない

受入時

  • 冷凍製品や魚類を選別してアニサキスが寄生した原材料を避ける
  • 信頼できる処理業者を選ぶ

下処理

  • 一人に作業を依存しないように教育訓練を行う
  • 作業者以外の目でチェックできる体制

盛付

  • 最終チェックができる時間の確保

カンピロバクター

カンピロバクターとは?

ニワトリ、ウシ等の家禽や家畜をはじめ、ペット、野鳥、野生動物など多くの動物が保菌しています。

ヒトや動物の腸管内でしか増殖しない、乾燥に弱い通常の加熱調理で死滅するなどの特性を持っています。また、数百個程度と比較的少ない菌量を摂取することによりヒトへの感染が成立します。

乳幼児・高齢者、その他抵抗力の弱い方では重篤化する危険性もあります。さらに、感染した数週間後に手足の麻痺や顔面神経麻痺、呼吸困難等を起こす『ギラン・バレー症候群』を発症する場合があります。

予防法は?

カンピロバクター食中毒のうち、原因食品として鶏レバーやささみなどの刺身、鶏肉のタタキ、鶏わさなどの半生製品、加熱不足の調理品が多く認められています。中心までしっかり加熱しましょう。

また、調理中の取り扱い不備による二次汚染等が指摘されています。食材だけではなく、使用する調理器具や調理者の手指の洗浄・消毒にも注意しましょう。

リスク対策
  1. 生きたまま摂取した場合
    1. 影響の重篤さ
      通常は他の感染型細菌性食中毒と変わらない、中程度→→→影響の大きさは変えられない
      ギランバレー症候群になると重篤、後遺症など将来的な影響も大きい→→→影響の大きさは変えられない
    2. 遭遇する確率
      本来は汚染された原料を生食することがなく、極めて低い→→→この確率は下げられる
      少量の二次汚染や加熱不足があった場合でも、感染成立してしまう→→→この確率は下げられる
  2. 死滅したものを摂取した場合
    1. 影響の重篤さ
      なし→→→影響がないので対策の必要なし
    2. 遭遇する確率
      高い→→→影響がないので対策の必要なし
【焼き鳥を作る場合の重要管理点】

ポイント:危害除去するべき工程を見極める

加熱時

  • 75℃、1分または60℃、数分の加熱で殺菌する
  • 原料肉の状態により中心温度は変わるので、中心温度測定が確実

環境整備と一般衛生管理

  • 加熱殺菌前に汚染したものを特定(手、作業台、調理器具、冷蔵庫、蛇口、シンク、包丁、まな板、ラップ、調味料など)
  • 汚染したものは、生食食品(サラダなど)の二次汚染につながらないか

従業員

  • 人の腸管内で増殖するので、従業員からの汚染に注意

ノロウイルス

ノロウイルスの特徴

乾燥に強く、長時間感染源となります。症状がなくなってから10日間便から排出し続けた例もあります。

近年のノロウイルスの発生件数

コロナウイルスの流行に伴い、手洗いが習慣化したこと、体調不良であっても欠席しにくい冠婚葬祭の減少により全体的に少なくなっています。

リスク対策
  1. 生きたまま摂取した場合
    1. 影響の重篤さ
      重症化はしにくく、低い→→→影響の大きさは変えられない
    2. 遭遇する確率
      生食用カキであっても蓄積している場合がある→→→この確率は変えられない
      少量の二次汚染や加熱不足があった場合でも、感染成立してしまう→→→この確率は下げられる
  2. 死滅したものを摂取した場合
    1. 影響の重篤さ
      なし→→→影響がないので対策の必要なし
    2. 遭遇する確率
      高い→→→影響がないので対策の必要なし
【カキフライを作る場合の重要管理点】

ポイント:危害除去するべき工程を見極める

加熱時

  • 85℃、1分の加熱で殺菌する(通常より10℃高いので注意)
  • 原料の状態により中心温度は変わるので、中心温度測定が確実(冷凍でも死滅しない)

環境整備と一般衛生管理

  • 加熱殺菌前に汚染したものを特定(手、作業台、調理器具、冷蔵庫、蛇口、シンク、包丁、まな板、ラップ、調味料など)
  • 汚染したものは、生食食品(サラダなど)の二次汚染につながらないか

従業員

  • 人の腸管内で増殖し、嘔吐と下痢が激しく周囲を汚染するので従業員、客からの汚染に注意

腸管出血性大腸菌

腸管出血性大腸菌の原因食品

国内では井戸水、牛肉、牛レバー刺し、ハンバーグ、牛角切りステーキ、牛タタキ、ローストビーフ、シカ肉、サラダ、貝割れ大根、キャベツ、メロン、白菜漬け、日本そば、シーフードソース等様々な食品や食材から見つかっていますので、食品の洗浄や加熱等、衛生的な取り扱いが大切です。

リスク対策
  1. 生きたまま摂取した場合
    1. 影響の重篤さ
      重症化はしやすい→→→影響の大きさは変えられない
    2. 遭遇する確率
      十分に加熱しない食品も喫食する文化があるため、人によっては高い→→→この確率は下げられる
      少量の二次汚染や加熱不足があった場合でも、感染成立してしまう→→→この確率は下げられる
      最近、O157の事例が増えている。原料汚染が拡がれば確率が高まる→→→この確率は変えられない
  2. 死滅したものを摂取した場合
    1. 影響の重篤さ
      なし→→→影響がないので対策の必要なし
    2. 遭遇する確率
      高い→→→影響がないので対策の必要なし
【ビーフカツサンドを作る場合の重要管理点】

ポイント:危害除去するべき工程を見極める

加熱時

  • 75℃、1分の加熱で殺菌する
  • 原料の状態により中心温度は変わるので、中心温度測定が確実
  • ミディアムレアは安全か、情報収集も必要

環境整備と一般衛生管理

  • 加熱殺菌前に汚染したものを特定(手、作業台、調理器具、冷蔵庫、蛇口、シンク、包丁、まな板、ラップ、調味料など)
  • 汚染したものは、生食食品(サラダなど)の二次汚染につながらないか

まとめ

事故を防ぐために

  1. リスク分析を行います
    普通にやるべきことは、くせになるように教育訓練する
    特別に管理するべきことは、確認と検証を毎回行う
  2. 一歩踏み込みます
    最終的に喫食されるまでの取扱いを想定する
    最後まで安全性が保たれるよう対応する
  3. さらに一歩踏み込みます
    決めたことが守られているか、リスク分析時から変化したことは無いか、常に確認する
    潜在的な要因を探り、対策を取る
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