食中毒の発生について

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令和2年6月乙訓保健所管内で食中毒が発生しました

乙訓食品衛生協会では食品衛生指導員を中心にコロナ禍におけるテイクアウト事業の急増に対し、チラシとウェブサイトによる注意喚起を行ってきました。

しかし、残念なことに乙訓に保健所管内で53名もの医療従事者の有症者を出す大きな食中毒事故の発生を許してしまいました。

湿度の高い梅雨、暑い夏の時季を迎えるにあたり、再発防止のために今回の事故発生の経緯を共有し対策を考えていきたいと思います。

概要(令和2年6月9日京都府発表の資料より)

有症者

  • 医療機関の1グループ133名中53名(男性16名、女性37名:22~70歳)
  • 1名が入院、快方に向かっている

おもな症状

下痢、発熱

病因物質

サルモネラ属菌

原因食事

6月1日(月)~4日(木)に長岡京市内飲食施設から提供された弁当

主なメニュー

鶏胸肉のハム、スペイン風オムレツ、春キャベツのケークサレ、ポテトサラダ、大豆のクリーム煮、ターメリックライス など

原因となった献立

 鶏胸肉のハム

  • 前日に生肉を塩でもみこむ
  • 鍋にお湯を沸かして湯がく
  • 氷水に落として急冷し、切り分ける

レシピサイトなどでご家庭用に「簡単にできる鶏ハム」のようなサイトがたくさんありますが、基本的に食肉加工は専門的な知識が必要な分野です。
▼塩分濃度の不足。
▼大量調理により、肉と肉との接点に火が通らなかった。
▼鍋の大きさと湯量の不足により指示された時間通りでは加熱不足であった。
などが考えられます。

 春キャベツのケークサレ

  • ケークサレとはフランス語で「塩味のケーキ」のこと
  • 様々な具材と生地をパウンド型に入れて、ケーキのように焼き上げる
  • 今回は、前日調理を行っていた

▼ケークサレの場合、普通のケーキと違って糖分が少ないため微生物が繁殖できる「自由水」の割合が高くなりますので火入れはより慎重になる必要があります。
▼具材に水分が多い場合、火の通りが悪くなりますので加熱温度、加熱時間に工夫が必要です。

鶏とひよこと卵

サルモネラ属菌の食中毒について

特徴

サルモネラの主な生息場所が家畜の腸管であるため、食中毒は食肉や卵の畜産食品を原因とすることが多い。子供や老人では極めて少量でも発症することがわかっている。

酸素があってもなくても増殖できる通性嫌気性菌であるため真空パックしても安全とは言えない。発育温度帯は5.2~46.2℃で、大部分は7℃以下では増殖できず、65℃、5分くらいで死滅する。乾燥環境には比較的強い。

汚染経路と原因食品

人や動物の腸管、自然界(川、下水、湖など)に広く生息する。生肉、特に鶏肉と卵を汚染することが多い。ウナギ等の魚類、ケーキ、生野菜など広範囲な食品汚染例の報告もある。

食中毒症状

潜伏期間は6~72時間で、激しい腹痛、下痢、発熱、嘔吐を発症し、長期にわたり保菌者となることもある。

サルモネラ菌

予防策

  1. 肉・卵は十分に加熱(75℃以上、1分以上)する。
  2. 食肉や卵を取り扱った手指や調理器具はその都度必ず洗浄消毒すること。(二次汚染防止)
  3. 低温保存(可能な限り4℃以下)により増殖を効果的に抑制すること。

鶏胸肉のハムについて

 ご家庭向けのレシピでは塩分濃度が低い場合がありますので、レシピの採用にはよく知った方に助言を求めましょう。

 お肉を投入した際に温度が下がりすぎないように、たっぷりのお湯と大きな鍋を用いて調理しましょう。

 カットするときに火入れの状態を確認できる技術と時間的余裕を確保しましょう。

春キャベツののケークサレについて

 中に入れる具材の状態によって水分量が異なるため、火入れにかかる時間は変化します。そのため、レシピに書かれた焼成時間を鵜呑みにするのではなく、その時々の状態を「色」「香り」「弾力」などで判断することにしましょう。

 できるだけ中心温度を測るようにしましょう。温度計がない場合、金串を刺して10秒数えたのち下唇の下にあてて温度を測る古典的な手法も有効です。

テイクアウトやお弁当の販売で食中毒を発生させないために

京都府より

事業者の皆さんへ

  1. 持ち帰りや宅配等に適したメニューを選定すること。(鮮魚介類等の生ものの提供は避けるなど)
  2. 施設の規模に応じた提供食数とすること。
  3. 加熱が必要な食品は、中心部まで十分に加熱し、確認すること。
  4. 調理済みの食品は、食中毒菌の発育至適温度帯(約20℃~50℃)に置かれる時間が極力短くなるよう、適切な温度管理(10℃以下又は65℃以上での保存)を行うこと。
    (例)小分けによる速やかな放冷、持ち帰り時の保冷剤の使用、保冷・保温ボックスによる配達など
  5. 消費者に対して速やかに喫食するようシールの貼付等により十分に情報提供すること

消費者の皆さんへ

 テイクアウトや宅配による食品は、店内で提供される食品と比べ、調理から食べるまでの時間が長くなり、食中毒のリスクが高まります。これらの食品はできるだけ早く食べましょう。

お客様の心理を理解しましょう

お店側が考えていることとお客様の間で考え方は食い違っていることがとても多いです。

ランチ時に店頭でお弁当を積み上げて販売していたとしましょう。

これだけ暑い中売っているし、お弁当だからすぐ食べてくれるだろう!

お店の人冷蔵庫に入れてなかったから、外に出しておいても大丈夫よね。夜お父さんと一緒に食べようかしら

このような認識の違いからくる事故を防ぐためにも、店頭に並べる商品はサンプル程度にして店内の涼しい場所や冷蔵庫で保管するようにしましょう。

消費期限の設定について

また消費期限の設定には安全係数を1割程度かけることになっています。10時製造、20時廃棄だとすれば消費期限は19時になりますし、15時廃棄なら14時半が消費期限です。

また上記のようにお客様は購入後いつ喫食されるかはわかりません。消費期限内に販売すればよいのではなく、お客様のご利用シーンを想像した販売期限を独自に設定することも有効です。

今回の事例では提供先が医療機関であったため、弁当が届いてすぐに食事をとれずしばらく放置される時間があったようです。一般に事業所で従事される方が給食のように一斉に食事をとることは稀です。したがって、届け先の行動パターンを想像して時間差でお届けすることも是非ご検討ください。

テイクアウト事業専用のHACCP(ハサップ)を作成しましょう。

義務化されたHACCP(危害分析重要管理点)飲食店などもともとの事業に対しては設定され記録を進められていることと思います。

ところがテイクアウトに関する重要管理点はこれまで見てきたように異なります。火入れの確認の仕方、加工前、加工後の食材の管理方法、消費期限の設定など改めて見直しましょう。

事故を防ぐ他のチェックリスト

  1. リスク分析を行います。
    • 普通にやるべきことは、くせになるように教育訓練する。
    • 特別に管理すべきことは、確認と検証を毎回行う。
  2. 一歩踏み込みます。
    • 最終的に喫食されるまでの取扱いを想定する。
    • 最後まで安全性が保てるよう対応する。
  3. 更に一歩踏み込みます。
    • 決めたことが守られているか、リスク分析時から変化したことは無いか、常に確認する。
    • 潜在的な要因を探り、対策を取る。
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